相続ブログ

2015年1月 5日 月曜日

相続放棄について(その2)


「相続放棄」という手続は,被相続人の債権者(被相続人にお金を貸している人など)の立場からすると,本当であれば,(被相続人が亡くなった後でも)その相続人から返済してもらえるはずのお金を,回収できなくなってしまうという,大きな不利益をともなう手続です。
そこで,民法は,「相続放棄」の手続をとることができる期間や条件を設けることで,相続人の利益と,被相続人の債権者の利益との調整を図っています。

まず,「相続放棄」ができる期間ですが,「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3か月以内に,家庭裁判所に相続放棄の申立をしなくてしなくてはなりません。
これは,被相続人の債権者が"貸したお金を相続人に請求できるかどうかが分からない"という状態を長引かせるのは良くないと考えられているからです。
この相続放棄をするかしないかを考える期間を『熟慮期間』といいます。

ここで,「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは,基本的には,被相続人が亡くなったことを知ったときをいいますので,通常は,被相続人の死後3か月以内に相続放棄の手続を行うことが必要です。
(被相続人が亡くなっていても,そのことを知らない間は『熟慮期間』はスタートしません)
こう申し上げると, 3か月間も時間があるので,ゆっくり考えればよいと考えられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし,被相続人が亡くなられた後は,葬儀や遺品整理などでばたばたしてしまいますし,被相続人の財産や借金の金額を整理するのに時間がかかり,いつの間にか3か月を経過していることもよくありますので,早めに専門家に相談する必要があります。

なお,被相続人が亡くなったことを知ってから3か月という制限には,つぎのような例外的な場面もあります。

まず,相続放棄が行われると,相続放棄をした相続人は,初めから「相続人でなかった」ものとして扱われます。そのため,被相続人に子どもがいた場合でも,その子どもが全員相続放棄をした場合には,被相続人の父と母が相続人となり,その父と母がともに相続放棄した場合(あるいは,被相続人の死亡時に既に亡くなられていた場合)には,被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
すると,被相続人の父母,あるいは,被相続人の兄弟姉妹は,先順位の相続人(被相続人の兄弟姉妹(第3順位)からみた場合,被相続人の子ども(第1順位)たちや父母(第2順位))が相続放棄したことを知ったときに初めて相続人となりますので,この時が,「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」となり,そこから3か月の熟慮期間がスタートします。

また,もう1つの例外が,被相続人の死後3か月が経過していているものの,①相続人が『被相続人にはなにも財産がない』と信じていて,②被相続人との相続人との関係から,相続人が被相続人の借金の存在を調べることが難しく,③相続人が『被相続人にはなにも財産がない』と信じたことに相当な理由がある場合には,被相続人の死後3か月が経過していても,被相続人の借金の存在を知ったときから3か月間は,相続放棄を行うことができます。
つまり,連絡をとっていなかった親が亡くなったものの,親には貯金も借金もないと考えてなにも手続をしないでいたところ, 3か月以上経ってから,急に債権者から借金の支払を求められた場合には,その請求がきたときを「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」であるとして,そこから3か月間,相続放棄を行うことができることになります。

なお,3か月という『熟慮期間』については,特別な事情がある場合には,これを伸ばしてもらうことも可能です。
例えば,被相続人が会社を経営していたりとか,遠くに住んでいたりといった事情で,被相続人の財産を調べるのに時間がかかる場合には,『熟慮期間』内に家庭裁判所に申し立てることで,『熟慮期間』を伸ばしてもらうことができます。
この制度は法律の建て付けとしては例外的な措置となっていますが,裁判所の運用としては伸長を広く認める傾向にありますので,『熟慮期間』が迫っている場合には重宝する制度です。

(『相続放棄について(その3)』へ続きます)


投稿者 川崎パシフィック法律事務所

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